山口弘一株式会社ナショナルトータルビバレッジ代表取締役社長

 

先輩起業家インタビュー 第5弾

2009年に株式会社ナショナルトータルビバレッジに入社し、2012年に代表取締役となった山口弘一さん。
同社は飲料販売を軸に環境機材の提供など幅広い事業を展開していますが、新事業として、山口さんが2年もの歳月をかけて開発したサウナー専用ドリンク「ととのった」を2022年9月に販売!1年で全国200以上の温浴施設にて販売されるなど、驚異的なスピードで成長しています!
自宅にテントサウナを置くほどのサウナ好きである山口さんは、令和5年度の相模原アクセラレーションプログラム(SAP)に採択されており、スピードを更に上げて急成長を続けています!
世界中の健康を飲料から支えるビジョンを掲げる山口さんに、企業の成長や新事業に取り組むアグレッシブなお話をインタビューしてきました!

プロフィール

・1997年3月  津久井高等学校卒業
・1997年4月  大手ブレーンサービス株式会社入社
・1999年3月 同社退社
・1999年6月 有限会社アサヒルーフ入社
・2001年5月 同社退社後西東京ベンディング株式会社入社 
・2007年1月 社内新規事業立ち上げ宅配水事業開始
・2008年1月 1年間で200軒以上の新規開拓
・2009年8月 西東京ベンディング(株)資金難により破綻
・同年 株式会社ナショナルトータルビバレッジ入社
・2010年 同社取締役就任
・2011年 同社代表取締役に就任


世界初!?サウナー専用ドリンク「ととのった」とは?

山口さんが開発した、サウナー専用ドリンク「ととのった」。酸味の強いすっきりとした味わいと、サウナーに必要な栄養素が含まれています!(公式HP:https://totonotta.life/)

はじめに、御社の事業概要について教えてください

飲料の販売、コカ・コーラの自動販売機と商品の卸業、クリクラの宅配事業を、相模原と小田原の2拠点でやっています。
サウナ専用ドリンク「ととのった」は昨年9月に自社ブランドとしてリリースしました。

「ととのった」を開発するきっかけは何ですか?

2019年に青年会議所の世界会議でエストニアに行った際、伝統的なスモークサウナがあると聞いていたので、最終日に時間があるから行ってみようとなりました。
そのサウナは、エストニア東南部に位置するヴォル地域という秘境にあるため、やっとの思いでたどり着き、無事サウナを体験することができました。
外気温は0度以下で池も凍っていたので、外気浴ではなく、小屋でお茶を飲んで休み、またサウナに入るということを繰り返しましたが、すごい神秘的な体験でしたね。
日本に帰り、早速テントサウナをロシアから取り寄せて庭に設置しました(笑)それが僕のサウナー人生のスタートです。
サウナは早朝に入ることが多いので、サウナ後にビールは飲めないから何かいい飲料はないか調べたら、オロポ(オロナミンCとポカリスエットを混ぜた飲み物)というものがあるとわかったが、砂糖が多く、私自身糖質制限をしていたということもあり、自分でサウナと相性の良い飲料を作ろうと思いましたね。
2020年から構想し、2年の開発期間を経て2022年に発売されました。

「ととのった」について、他製品との差別化・優位性・独自性はなんですか?

そもそもサウナ後に飲むドリンクとしてのオロポは、ユーザーが独自に考案したものです。
なぜオロナミンCとポカリスエットを混ぜたのかを考えた時、入っている成分に注目してみると、電解物(塩分やナトリウム)とビタミンが含まれていることに気づき、ユーザーは健康志向なのではと考えました。
その着想から、私は、まずはオロポを真似たものをテスト的に作ってみましたが、できたものはカロリーが高く甘かったので、もっと甘くなくすっきりしたものが良いなと思いました。
そこで、サウナに入ると、体から何が失われるか?という視点で考えてたところ、アミノ酸、ビタミン、塩分などが失われることに気づきました。さらに、クエン酸も梅干し離れが進む日本人にとって必要なのではと考え、加えてみました。
このように、サウナに入る方の健康を保ちたいという考えを軸として、着色料も天然のものだけを使い、カロリーも32カロリーに抑え、食物繊維も豊富な、ある意味サプリメント飲料のような製品となりました。

「ととのった」のデザインは、どのような意図がありますか?

ゆくゆくはサウナの聖地にこの「ととのった」を置きたいと考えていたこともあり、日本の文化を織り交ぜたデザインを意識しました。
ロゴについても、縦文字は日本の文化であり、江戸の家紋とか火消しのマークをイメージしているほか、青褐色(あおかちいろ)という濃い色を使っているのも、日本をイメージしています。ちなみにこの色(褐色)は自分で工場で実際に混ぜたものを見て選びました。
木目のようなデザインも、サウナと和を彷彿させています。
このような古かっこいい感じがいいなと、素人発想で作りましたが、結構好評をいただいています。

販売から1年で200店舗以上展開してますが、販路拡大の経緯は?

一番大きいのは温浴施設に強い商社と縁を持てたことですかね。自社配送は数十件だけど、商社を通じて一気に拡大しました。
温浴施設は地域に根差した会社であることからも、地元の酒屋との取引があるため新規に入ることは難しいので、大手商社が応援してくれれば、導入しやすくなりますね。
あとは温浴施設が売れると認識してもらうことも大事だと思いますし、その実績があるからこそ、商社も自信を持って売ってくれますね。
温浴施設にはまずサンプルとして提供していますので、最初商社は疑心暗鬼でしたし、私自身も想定以上の売上で驚きました(笑。

※なお、令和6年3月には月間出荷数30,000本を達成し、温浴施設は300軒以上に増加した。

経営の中で見えてくる企業の成長に不可欠な要素とは?

経営者として、苦労していることや意識していることはなんですか?

経営者って、四六時中大変じゃないですか、苦労は本当絶えませんね(笑
心休まる日がなくて、余裕のある経営者を見るとすごいなと思いますし、いつも不安に思っていますよ。(笑
意識としては、自分なりのルーティンがあって、朝会社に来たら、机に置いてある砂時計をひっくり返し、時間が進むことを視覚的に捉え、命や時間を無駄にしていないかどうか、見つめ直しています。
時間を無駄にしたくないし、いつでも何かチャレンジできないか、そういうことを常日頃考えていますね。
人間は自分の手に入れたものしか手にしないし、責任を外に置くとか、楽な方に行きがちですが、それでは自分は成長しないと思っています。
例えば、雨が降っていてもイライラしているだけの人っていると思うんですけど、私の場合は、傘を作ってみたり、雨の日でも楽しく過ごせることを考えたり、そういう意識をいつも持っています。

経営されている中でのやりがいはなんですか?

一番は社員が楽しそうに仕事をしている様子や、成長している姿を見ることですね。
社員が豊かに過ごせる状態を作ることが会社の在るべき姿と思っています。
自分のために学び、成長してほしいし、その結果会社は成長しますよね。なので、社員は会社の駒になるのではなく、会社を使い倒して自分の人生を豊かにしてほしいですね(笑。
男性って仕事に人生の軸足を置きがちじゃないですか?僕がそうだったんですが、仕事はあくまで幸せになるための手段であると今は考えています。
仲良く過ごせる温かい家庭が幸せと感じており、売上だけ伸びても満たせないことはあると思いますし、一番大事なものは家族や社員で、この人たちを豊かにすることからだと考えています。

社員との向き合い方についてはどのように考えていますか?

社員とは1on1の面談を毎月実施しています。
前は私が色々と伝える場になっていたんですけど、今は社員のことをしっかり理解するため、色々な話を聞くようにしています。
趣味の話も聞くし、今の仕事の課題も聞き、私自身サポーターとしてできることは力になりたい、と考えていますね。
ヒントを伝えることもありますけど、私ならこう思うと伝えるだけですね。
最初は伝えることに意識がいっていたんですけど、興味を持って社員の話を聞くことで、社員のことがしっかり理解できると気づきましたね。
実はそのことに気づかせてくれたのは、一番の協力者である妻との関わり方がきっかけになっていたりします。

SAPへの挑戦、思考とともに拡がる成長の選択肢とは?

SAPに参加したきっかけはなんですか?

私自身100億円企業を目指していましたが、その方法がよくわかっていない中、今年の6月頃に相模原市からSDGsパートナー向けにチラシを送ってもらったのが、SAPを知ったきっかけです。
普段なら特に気にしなかったと思うのですが、ちょうど同時期に日本プロスピーカー協会でプレゼンの講習を受けており、その成果を何かの形で出してみたいと思っていたので、エントリーしました。

SAPに参加してみての感想は?

アウトプットする場があると新しいものを考える必要が出てきますよね。
SAPの定例メンタリングでは、振り返りができ、新しい課題も出てくるのですが、同時に今まさにチャレンジしていることがよくわかります。
VCミートアップなどではプレゼンをしないといけないから行動にコミットできるし、第三者に話すことで考えが整理することもでき、頭の中でモヤモヤしていたものがどんどんクリアになっていきますね。
トーマツ(SAP受託事業者)さんは、100億企業を達成した後はどういう未来を描いているのか、国際的な会社になった後など、自身が想定しているよりも高い設定の将来像を絶えず投げかけてくれるので、自分の思考が拡張されますね。
それから、SAPでは、スタートアップやベンチャーに限らず、たとえば 世代交代して再スタートを目指すような企業も参加できるようにしても良いと思います。
チャレンジを目指す企業ならだれでも、といった間口を広げたプログラムがあっても面白いと思いますね。

SAPに参加する中で、今後の成長戦略にどのような変化がありましたか?

SAPにおけるVCミートアップでは、本質的な課題を見つめ直すとともに、売り場を確保し、認知度が広がればさらに拡大するというヒントを得られました。
現状は温浴施設にすでに設置されている冷蔵庫の一部を借りていますが、「冷蔵庫を抑える=売り場を抑える」ということになるので、今まさに新たに冷蔵庫を温浴施設に導入するテストを始めるところです。
売り場の確保が実現できれば、爆発的に導入数と認知度が拡大すると思いますので、まさにチャレンジの時期に入っていると感じています。
ヒントを得られたときに、結局研究するべきはナショナルブランドがやってきたことなのではとも同時に思いました。
コカ・コーラがこれまでやったことは看板を出すことと冷蔵庫を出すことでしたし、それをミックスして展開してきてました。
これをサウナに限定して考えると、冷蔵庫での展開は費用対効果がかなり期待できそうな印象でした。
ヒントをもらってからは、冷蔵庫メーカーのJCMさんともすぐに面談しましたね。
できるかどうかというよりも、やるかどうかが重要だと感じましたね。やると決めたら資金も決まっていきましたし、引き寄せの法則みたいなものがあるのかな(笑)

SAPに参加し、さらに成長スピードを上げていますが、意識していることはありますか?

具体的に何をしたい、何をするべきか、というのは明確にしておくべきと思っています。
普段からですが、毎朝5時には起きて、サウナに入るか会社に来て、そこで一人で考える時間を作ってますね。
「ただ考える」ということはすごい重要だと思っていて、その上でSAPの定例メンタリングで考えてきたことを対話によって整理することで、現状で足りていない行動を把握し、実行するようにしています。

拡大を続けるビジネスと先輩起業家としてのメッセージ

「ととのった」以外で考えている事業はありますか?

人々の健康を緩やかに支える企業として、希少糖を使ったもの、オリゴ糖などを使ったもの、を活用し、虫歯にならないドリンクなど、日常生活に入り込むような事業にチャレンジしたいですね。
その他だと、サウナ自体を深堀したいと思っていて、例えば相模原では?というイメージで考えています。
森林や湖がある相模原ならではを考え、県や市と連携し、地元の流木や間伐材を使い、サーキュラーエコノミーのようなものを相模原モデルとして展開したいとも考えています。

目指している実現したい世界やビジョンは何ですか?

サウナは健康じゃないと続けられないので、サウナに入れるような体の状態を作ってあげることは健康寿命に貢献できていると思っており、サウナ習慣という趣味の世界で飲み物も通じて人々の健康を支えたいと思っています。
さらに将来的には、目的から飲料を開発して、健康をサポートしたいとも思っています。
温浴施設も厳しい状況であると思うので、私たちの製品が手助けできればとも思いますね。

最後に先輩経営者として、起業する方に向けたメッセージをお願いします。

チャレンジすること自体が尊いと思いますので、自信を持ってほしいです。
一方で、努力にも正しい選択は必要ですから、知識を獲得するべきだと思いますし、誰よりも勉強し、誰よりも謙虚な人が本当に成功すると思っています。
直面する壁に対して、知識や人の力を借りたら簡単に乗り越えられることもありますし、今のやり方じゃない方法を模索することも重要だと思います。
大切にしている言葉で、「あなたの悩みは世界で初めての悩みじゃないはずだ」というものがあります。悩みは必ず乗り越えられますので、是非チャレンジを続けてください。
それと、青年会議所にも是非参加してきてくださいね(笑


企業情報

会社名

株式会社ナショナルトータルビバレッジ

所在地

〒252-0176 神奈川県相模原市緑区寸沢嵐3187-3

設立年月

2009年7月

ホームページ

https://n-t-b.jp

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